26.07.26
Makoto Oozu

Editor, Text, Photography
Ben Davis (The White Paper)

「ゲームこそが、僕のルーツなんです」⸺そう語るのは、Tokyo Pixelを主宰する大図まことだ。「子どもの頃、欲しくてたまらなかったのがファミコンでした。手に入らないとわかったとき、それなら大人になって"作る側"になろう、と夢見るようになって」。そう言って、彼は笑う。

東京を拠点に、ピクセルアート作家として、刺繍作家として、そしてギャラリーオーナーとして活動する大図にとって、このゲームへの愛は20年以上にわたり創作の核を成してきた。その出発点は20代前半。自分なりの表現を追い求めるなかで、イラストレーションから手刺繍の世界へと足を踏み入れたことが、すべての始まりだった。クロスステッチの技法とゲーム的なモチーフを掛け合わせた作品は、その独特で遊び心に満ちたイメージによって、瞬く間に存在感を放つようになる。多言語での書籍化、ブランドとのコラボレーション、数々の受注制作⸺そうした仕事が次々と舞い込み、Tokyo Pixelというブランドとデザインスタジオの成長を後押ししていった。

二次元作品や刺繍作品にとどまらず、大図は日本各地の作り手たちとの協働にも踏み出していく。信楽の陶芸工房から、東京のぬいぐるみメーカー、そして地元・蔵前の和紙テープや判子の職人まで。さまざまな作り手と組みながら、彼は個性豊かなアーティストグッズを生み出してきた。そのひとつが、波佐見でつくられるブランド〈The Porcelains〉だ。2011年、西海陶器の陶磁器デザイナー・阿部薫太郎との偶然の出会いから生まれたこのシリーズは、大図のピクセルアートをマグカップや皿などのテーブルウェアへと落とし込んだもの。富士山を描いた一枚から始まり、いまでは日本各地の風景やモチーフへと広がりを見せている。

「ピクセル化された絵柄には、タイルの壁のようなボコボコとした凹凸があるんです」と大図は説明する。釉薬をかけた陶器に転写シートを丁寧に貼り、もう一度窯で焼成することで生まれる質感だ。彼はそこに、日本の銭湯に見られるタイル絵との共通点を見いだす。ほどよいグリッド(マス目)の大きさを見極めることも、もうひとつの重要な課題だった。生産上の制約と、最終的な絵の見え方の両方を考え合わせる必要があったからだ。「ピクセルアートには、いつだって"かわいさ"の要素があるべきだと思っていて」と彼は続ける。「でも、絵が細かくなりすぎると、それが簡単に失われてしまうんです」

〈The Porcelains〉シリーズ最新作のモチーフは、19世紀初頭に浮世絵師・葛飾北斎が手がけた「神奈川沖浪裏」。木版画として数えきれないほど複製されてきたこの名画は、日本の美意識を世界へと伝えるうえで決定的な役割を果たし、その影響はゴッホやモネにまで及んだ。大図にとって、これほど名高い絵をピクセルアートへ翻案する作業は、ただ18タイル分の高さのグリッドに落とし込むだけでは終わらなかった。原画のもつ動き、象徴性、そして本質を、いかにとどめるか⸺。マグに用いられる色はわずか7色だが、なかでも北斎が先駆的に用いたプルシアンブルーへの敬意を表すことが、何より重要だったという。

このマグのデザインには、何世紀も前の名画に対する大図ならではの眼差しが宿っている。さらに、8ビットゲームから銭湯のタイル絵まで、日本文化のさまざまな側面への目配せが、その魅力にいっそうの奥行きを与えている。「限られた枠のなかでイメージを表現する⸺それこそがピクセルアートのいちばんの面白さなんです」。そう言って、彼は微笑んだ。

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